神学大全第一部第六問題第二項
前のページ次のページ

第二項

[二八四七二]第一部第六問題第二項第一異論

第二のものについては次のように進められる。 神は最高善ではないと思われる。

なぜなら、最高善は、善の上に何かを付加しているのであり、 そうでないならば、 それはいかなる善にも適合するはずだからである。 ところで、 何かに対する別の何かの付加によって成立するいかなるものも、 複合されたものである。 したがって、最高善は複合されたものである。 ところが、すでに示されたように、神は最高度に単純なものである。 したがって、神は最高善ではない。

[二八四七三]第一部第六問題第二項第二異論

さらに、「善とは、 万物が欲求するもののことである」と哲学者は述べている。 ところで、万物の目的である神のみのほかに、 万物が欲求するものは何もない。 したがって、善であるものは神のほかには何もない。 このことは、『マタイによる福音書』第十九章で、 「神のみのほかに善である者は誰もいない」 と述べられていることからも正しいと思われる。 ところで、「最高」というのは、 他のものとの比較において言われることである。 たとえば、「最高に熱いもの」と言われるのは、 すべての熱いものとの比較においてである。 したがって、神は、最高善と呼ばれることができない。

[二八四七四]第一部第六問題第二項第三異論

さらに、「最高」ということは比較を含意している。 ところが、同一の類に属していないものは、比較可能ではない。 たとえば、甘さは線よりも大きいとか小さいとかと言われることは、 不合理である。 したがって、すでに述べられたことから明らかなように、 神は他の善であるものと同じ類には属していないのであるから、 それらとの比較において 神が最高善と呼ばれることはできないと思われる。

[二八四七五]第一部第六問題第二項反対異論

しかし反対に、アウグスティヌスは『三位一体論』第一巻で、 「神的な位格の三位一体は、 最も浄化された精神によって識別される最高善である」 と述べている。

[二八四七六]第一部第六問題第二項主文

私は答えて言わなければならない。 神は、 事物の何らかの類または秩序において最高善であるのみではなく、 端的な意味において最高善である。 なぜなら、すでに述べられたように、善が神に帰属するのは、 熱望されるすべての完全性が 第一原因としての彼から流出する限りにおいてだからである。 しかし、すでに述べられたことから明らかなように、 それらの完全性は、 同義的な作用者としての彼から流出するのではなく、 種の性質においても類の性質においても 彼の結果とは一致しない作用者としての彼から流出するのである。 ところで、結果の類似性は、 原因がまったく同義的である場合には 同一の形相として見出されるが、 原因が異義的である場合には、より卓越した様態で見出される。 たとえば、熱は、火においてよりも太陽において、 より卓越した様態で存在する。 したがって、善は、 万物の非同義的な第一原因としての神の中に存在するのであるから、 それは、 最も卓越した様態で彼の中に存在するのでなければならない。 彼が最高善と呼ばれるのは、この理由によるものである。

[二八四七七]第一部第六問題第二項第一異論解答

したがって、 第一のものについては次のように言わなければならない。 最高善は、何らかの絶対的なものではなく、 単なる関係を善の上に付加するにすぎない。 ところで、被造物との関係において何かが神について語られる場合、 その関係は、 神の中にではなく被造物の中に実在的に存在するのであり、 神の中には単に概念的に存在するにすぎない。 それは、知られ得るものが知識との関係において語られる理由が、 知られ得るものが知識に対する関係を持つからではなく、 知られ得るものに対する関係を知識が持つからであるのと 同様のことである。 したがって、 必ずしも 最高善の中に何らかの複合されたものが存在するわけではなく、 単に、最高善と比較すると、他の善には不足があるにすぎない。

[二八四七八]第一部第六問題第二項第二異論解答

第二のものについては次のように言わなければならない。 「善とは、万物が欲求するもののことである」と言われる場合、 それは、 それぞれの善が万物によって欲求される というような意味であると理解されるのではなく、 欲求されるものは何であろうと善の性質を持つ という意味であると理解される。 それに対して、 「神のみのほかに善である者は誰もいない」と言われるのは、 のちに述べられるであろうように、 本質によって善であるものについてのことであると理解される。

[二八四七九]第一部第六問題第二項第三異論解答

第三のものについては次のように言わなければならない。 同じ類のうちにないものは、 もしもそれらが異なる類に含まれているならば、 いかなる方法でも比較可能ではない。 ところで、神については、 彼が他の善であるものと同じ類のうちにあるということは 否定されるが、 それは、彼が何らかの他の類のうちにあるからではなく、 彼が類の外にあり、そしてすべての類の根源であるからである。 したがって、彼は、他のものに対して、 それらを超絶するものとして比較される。 「最高善」は、この種の比較を含意しているのである。

神学大全第一部第六問題第二項
前のページ次のページ