神学大全第一部第三問題第三項
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第三項

[二八三四二]第一部第三問題第三項第一異論

第三のものについては次のように進められる。 神は、彼の本質あるいは本性と同じものではないと思われる。

なぜなら、 いかなるものも自分自身の中に存在しているのではないからである。 ところが、神の本質あるいは本性、すなわち神性は、 神の中に存在すると言われる。 したがって、神は、 彼の本質あるいは本性と同じものではないと思われる。

[二八三四三]第一部第三問題第三項第二異論

さらに、結果は、その原因に類似したものとなる。 なぜなら、行動するすべてのものは、 自分に似たものを生み出すからである。 ところで、被造物においては、個体は、 その本性と同じものではない。 たとえば、人間は、その人間性と同じものではない。 したがって、神も、彼の神性と同じものではない。

[二八三四四]第一部第三問題第三項反対異論

しかし反対に、神については、 「彼は生きているものである」と言われるのみではなく、 「彼は命である」と言われる。 このことは、「私は、道、真理、 そして命です」という 『ヨハネによる福音書』第十四章の言葉からも明らかである。 ところで、命が生きているものに対して持つ関係は、 神性が神に対して持つ関係に等しい。 したがって、神とは、まさに神性のことである。

[二八三四五]第一部第三問題第三項主文

私は答えて言わなければならない。 神は、彼の本質あるいは本性と同じものである。

これを理解するためには、 次のことを知っていなければならない。 質料と形相から複合された事物においては、 本性あるいは本質が個体とは異なっているということは必然である。 なぜなら、本質あるいは本性は、 種の定義に属するもののみをそれ自身の中に包含するからである。 たとえば、人間性は、 人間の定義に属するものをそれ自身の中に包含する。 なぜなら、人間が人間であるのはそれらによってであり、それが、 人間性が表示しているもの、すなわち、 それによって人間が人間であるところのものだからである。 それに対して、個体的質料は、 それを個体化しているすべての付帯性とともに、 種の定義には属さない。 たとえば、「この肉」や「この骨」、あるいは白色か黒色か、 あるいは同様の他のものは、人間の定義には属さない。 したがって、「この肉」や「この骨」、 そして「この質料」を特徴づける付帯性は、 人間性の中には含まれない。 しかし、人間であるところのものには、それらが含まれている。 したがって、人間であるところのものは、 人間性が持たない何かをそれ自身の中に持っている。 そしてその結果として、人間と人間性は、 完全に同一のものであるということにはならず、人間性は、 人間の形相的な部分として表示される。 なぜなら、定義を構成する原理は、 ものを個体化する質料との関係において、 形相的な位置にあるからである。

それに対して、質料と形相から複合されておらず、 個体的質料によって、 すなわち「この質料」によって個体化がなされるのではなく、 形相それ自体がそれ自体によって個体化されているものにおいては、 形相それ自体が自存する個体でなければならない。 したがって、それらにおいては、 個体と本性とは異なるものではない。 したがって、すでに示されたように、 神は質料と形相から複合されたものではないのであるから、神は、 自らの神性、自らの命、 そして神についての述語となる その他のあらゆるものでなければならない。

[二八三四六]第一部第三問題第三項第一異論解答

したがって、 第一のものについては次のように言わなければならない。 我々は、 我々がそこから認識を受け取る複合されたものについて語る方法によってでなければ、 単純な事物について語ることができない。 したがって、神について語るとき、我々は、 彼の自存性を表示するために具体的な名辞を使用する。 なぜなら、我々のもとにおいては、 複合されたもの以外に自存するものが存在しないからである。 そして我々は、 彼の単純性を表示するために抽象的な名辞を使用する。 したがって、神性、命、 あるいはその他の同様のものが神の中に存在すると言われることは、 我々の知性が把握するもののうちにある多様性に関連づけるべきことであって、 事物のうちにある何らかの多様性に関連づけるべきことではない。

[二八三四七]第一部第三問題第三項第二異論解答

第二のものについては次のように言わなければならない。 神の結果は彼を模倣するが、完全に模倣するのではなく、 可能な限りにおいて模倣するにすぎない。 そして、 単純であり一つであるものが多くのものによってでなければ再現されることができないということは、 模倣の欠陥に属している。 その結果として、それらの多くのものにおいて複合が発生し、 その複合から、 それらのものにおいては個体と本性とが同じものではないということが生ずる。

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